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ホームコラム高額療養費の2026年8月改定

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高額療養費制度は2026年8月からどう変わった?年収別の上限額と「年間上限」を整理

公開:2026年9月3日/最終更新:2026年9月3日/監修:株式会社アールラボ

2026年8月1日から、高額療養費制度の自己負担限度額が見直されました。結論を先に言うと、変わった点は次の4つです。

  1. ひと月の上限額が引き上げ。70歳未満では、年収で決まる4つの区分がいずれも約7%上がりました(住民税非課税世帯は約4%)。
  2. 「多数回該当」の金額は据え置き。直近12か月に3回以上上限に達した人の4回目以降の上限額は、改定前と同じです。
  3. 「年間上限」が新設。毎年8月から翌年7月までの自己負担の合計にも上限がかかるようになりました。
  4. 2027年8月に第2段階。所得区分がさらに細かく分かれ、年収が高い層ほど上限額が上がる予定です。

本記事では厚生労働省の資料をもとに、改定前後の金額を年収別に並べ、民間の医療保険を考えるうえでどう受け止めればよいかまで整理します。特定の保険会社・商品をすすめる内容ではありません。

01 — BASICS

高額療養費制度のおさらい

高額療養費制度は、公的医療保険(健康保険・国民健康保険など)が使える治療について、ひと月(1日〜末日)の自己負担額に上限を設ける制度です。窓口負担は原則3割ですが、医療費が大きくなっても自己負担がどこまでも増えるわけではなく、年齢と所得に応じた上限で止まります。

たとえば年収約370万〜770万円の会社員(70歳未満)が、ひと月に100万円の医療費(総額)がかかる治療を受けた場合、3割負担なら30万円ですが、高額療養費制度を適用すると自己負担は92,940円になります(2026年8月改定後)。

制度の対象にならない費用があります。差額ベッド代、先進医療の技術料、自由診療、入院中の食事代などは高額療養費の対象外で、全額自己負担です。「上限額まで」で済むのは、あくまで公的医療保険が使える部分だけです。

出典:厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」

02 — WHAT CHANGED

2026年8月改定で変わった上限額(70歳未満)

70歳未満の所得区分は、標準報酬月額(会社員の場合。国民健康保険は所得額)で5つに分かれています。改定前と改定後のひと月の上限額を並べると次のとおりです。〈 〉内は多数回該当(直近12か月に4回目以降)の上限額で、改定前後で変わっていません。

所得区分(標準報酬月額/年収の目安)改定前(〜2026年7月)改定後(2026年8月〜)
83万円以上/約1,160万円以上252,600円+(総医療費−842,000円)×1%〈140,100円〉270,300円+(総医療費−901,000円)×1%〈140,100円〉
53〜79万円/約770万〜約1,160万円167,400円+(総医療費−558,000円)×1%〈93,000円〉179,100円+(総医療費−597,000円)×1%〈93,000円〉
28〜50万円/約370万〜約770万円80,100円+(総医療費−267,000円)×1%〈44,400円〉85,800円+(総医療費−286,000円)×1%〈44,400円〉
26万円以下/約370万円以下57,600円〈44,400円〉61,500円〈44,400円〉
住民税非課税世帯35,400円〈24,600円〉36,900円〈24,600円〉

改定後の額は厚生労働省「(参考)高額療養費制度の見直しについて」の70歳未満の月額上限。改定前の額は厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」に掲載されていた2026年7月までの限度額です。年収の目安は同資料の区分に基づく概数です。スマートフォンでは表を横にスクロールできます。

医療費100万円の月で、自己負担はいくら変わったか

もっとも人数の多い「標準報酬月額28〜50万円(年収約370万〜770万円)」の区分で、ひと月の医療費が100万円だった場合を比べます。

図1 医療費100万円の月の自己負担(標準報酬月額28〜50万円・70歳未満)

改定前(〜2026年7月)87,430円
改定後(2026年8月〜)92,940円(+5,510円)
多数回該当(4回目以降)44,400円(据え置き)

改定前=80,100円+(1,000,000円−267,000円)×1%=87,430円。改定後=85,800円+(1,000,000円−286,000円)×1%=92,940円。この区分では、医療費の総額にかかわらず改定による増加額はひと月5,510円で一定です。バーの長さは改定後の92,940円を基準にした比率です。

「上限額が上がった」と聞くと大きな負担増に感じますが、この区分ではひと月あたり5,510円の差です。一方で、治療が長期に及ぶ場合は「多数回該当」が据え置かれているため、4回目以降の月の負担は改定前と変わりません。

出典:厚生労働省「(参考)高額療養費制度の見直しについて」(PDF)全国健康保険協会(協会けんぽ)「【制度改正】令和8年8月から高額療養費制度が見直されます」

03 — ANNUAL CAP

新設された「年間上限」とは

今回の改定でもっとも新しい仕組みが「年間上限」です。これまでは、ひと月の上限に達しない月が何か月続いても、月ごとの自己負担が積み上がるだけでした。2026年8月からは、毎年8月から翌年7月までの12か月間の自己負担の合計にも上限が設けられ、合計が年間上限に達したあとの自己負担分は加入先の保険者(健康保険組合・協会けんぽ・市区町村など)から払い戻されます。

所得区分(標準報酬月額)年間上限(8月〜翌年7月)月額換算の目安
83万円以上168万円14万円
53〜79万円111万円92,500円
28〜50万円53万円約44,200円
26万円以下53万円(標準報酬月額15万円以下の方は41万円)約44,200円(約34,200円)
住民税非課税世帯29万円約24,200円

月額換算の目安は年間上限を12で割った額で、厚生労働省資料に「年間上限の月額平均」として示されている値です。いずれも多数回該当の上限額を下回る水準に設定されています。標準報酬月額15万円以下の方の41万円は、該当することが確認できた方について2027年8月以降に償還払いされる扱いです。

年間上限は「多数回該当」と役割が異なります。多数回該当は、ひと月の上限額まで払った月が3回あってはじめて4回目から効く仕組みで、上限額に届かない月が続く人には効きませんでした。年間上限は、その届かない月の負担を合計して見るので、毎月の通院が長く続く方にも配慮した仕組みといえます。

出典:厚生労働省「(参考)高額療養費制度の見直しについて」(PDF)

04 — PHASE 2

2027年8月の第2段階(所得区分の細分化)

今回の見直しは2段階で行われます。2026年8月の第1段階では上限額の水準だけが変わりましたが、2027年8月の第2段階では所得区分そのものが細かく分かれる予定です。70歳未満の区分は、住民税非課税を除いて4区分から12区分になります。

標準報酬月額(年収の目安)2027年8月からの月額上限(予定)年間上限
127万円以上(約1,650万円〜)342,000円+1%〈140,100円〉168万円
103〜121万円(約1,410万〜1,650万円)303,000円+1%〈140,100円〉168万円
83〜98万円(約1,160万〜1,410万円)270,300円+1%〈140,100円〉168万円
71〜79万円(約1,040万〜1,160万円)209,400円+1%〈93,000円〉111万円
62〜68万円(約950万〜1,040万円)194,400円+1%〈93,000円〉111万円
53〜59万円(約770万〜950万円)179,100円+1%〈93,000円〉111万円
44〜50万円(約650万〜770万円)110,400円+1%〈44,400円〉53万円
36〜41万円(約510万〜650万円)98,100円+1%〈44,400円〉53万円
28〜34万円(約370万〜510万円)85,800円+1%〈44,400円〉53万円
20〜26万円(約260万〜370万円)69,600円〈44,400円〉53万円
16〜19万円(約200万〜260万円)65,400円〈44,400円〉53万円
15万円以下(〜約200万円)61,500円〈34,500円〉41万円
住民税非課税世帯36,900円〈24,600円〉29万円

「+1%」は、総医療費のうち一定額を超えた部分の1%を加算する仕組みで、差し引く額は区分ごとに定められます(厚生労働省の概要資料には記載がないため、本記事では省略しています)。〈 〉内は多数回該当。年収約200万円未満の区分では多数回該当の額が34,500円に引き下げられます。いずれも厚生労働省資料に基づく予定で、施行までに変更される可能性があります。スマートフォンでは表を横にスクロールできます。

ポイントは、いま「28〜50万円」としてひとまとまりになっている層が、2027年8月からは3つに分かれることです。標準報酬月額が44〜50万円(年収約650万〜770万円)の方は、2026年8月の85,800円から2027年8月には110,400円へと、2段階で上がることになります。逆に、年収約200万円未満の方は多数回該当の額が下がり、年間上限も41万円と低めに設定されるなど、低所得の方への配慮が入っています。

出典:厚生労働省「(参考)高額療養費制度の見直しについて」(PDF)

05 — AGE 70 AND OVER

70歳以上の方の扱い

70歳以上の方の上限額は70歳未満とは別に定められており、外来だけの上限(外来特例)があります。今回の見直しでは、この外来特例の限度額も所得に応じて見直され、住民税非課税の区分には新たに外来の年間上限が導入されました。厚生労働省の資料では「毎月現在の上限額まで利用される方の負担は変わらない」水準に設定されたと説明されています。

70歳以上の具体的な金額は区分が多く、本記事では扱っていません。ご自身の区分の金額は、厚生労働省の資料または加入先の保険者の案内でご確認ください。

出典:厚生労働省「(参考)高額療養費制度の見直しについて」(PDF)

06 — WHAT IT MEANS FOR YOUR INSURANCE

民間の医療保険にどう影響するか

「上限が上がったのだから医療保険を厚くすべきか」というご相談が増えています。数字で見ると、年収約370万〜770万円の区分で上限額に達する月の負担増はひと月5,510円で、2027年8月の第2段階を含めても、年収約650万〜770万円の方でひと月あたり3万円前後の増加です。これは医療保険の保障額を大きく変える規模ではなく、まずいまの貯蓄で上限額×数か月分をまかなえるかを確認するのが出発点になります。

一方で、次の3点は今回の改定で変わっていません。民間の医療保険を考えるときは、上限額の数字よりもこちらの方が判断に影響します。

変わらない点 1
対象外の費用

差額ベッド代・先進医療の技術料・自由診療・食事代は引き続き全額自己負担です。高額療養費でカバーできない部分の大きさは、改定前後で同じです。

変わらない点 2
働けない期間の収入

高額療養費は医療費の制度で、治療中に収入が減る分は別問題です。会社員には傷病手当金がありますが、国民健康保険にはありません。

変わらない点 3
健康保険組合の付加給付

勤務先の健康保険組合によっては、上限額をさらに引き下げる独自の付加給付があります。今回の改定で付加給付の有無は変わりません。

つまり、医療保険を見直すべきかどうかは「上限額がいくら上がったか」ではなく、「対象外の費用にどこまで備えたいか」「収入が止まる期間をどう埋めるか」「勤務先の付加給付があるか」で決まります。今回の改定は、この3点をあらためて確認するきっかけとして使うのが現実的です。加入・解約のどちらが正しいかは、ご家庭の貯蓄・働き方・勤務先の制度によって異なります。

関連:保険の基礎知識「生命保険と公的保障制度」(高額療養費・傷病手当金・付加給付の図解)

07 — PROCEDURE

窓口で上限額までの支払いにする手続き

高額療養費は、何もしなければ「いったん3割を払い、あとから払い戻しを受ける」仕組みです。窓口での支払いを最初から上限額までにするには、次のどちらかが必要です。

マイナ保険証を使う

医療機関の窓口でマイナ保険証を提示し、限度額情報の提供に同意すると、事前の手続きなしで上限額までの支払いになります。

限度額適用認定証を提示する

加入先の保険者(健康保険組合・協会けんぽ・市区町村など)に申請して交付を受け、窓口に提示します。マイナ保険証を使わない場合の方法です。

また、同じ月・同じ公的医療保険に加入する家族の自己負担は合算できます(世帯合算)。70歳未満の場合は、医療機関ごと・入院と外来ごとに21,000円以上の自己負担があった分が合算の対象です。ご自身の所得区分は、会社員ならマイナポータルや勤務先の標準報酬月額の通知、国民健康保険なら市区町村の窓口で確認できます。

出典:厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」全国健康保険協会(協会けんぽ)「【制度改正】令和8年8月から高額療養費制度が見直されます」

08 — FAQ

よくある質問

改定はいつからですか。

2026年8月1日の診療分からです。第2段階の所得区分の細分化は2027年8月の予定です。

年収500万円の会社員の場合、ひと月の上限はいくらですか。

標準報酬月額28〜50万円の区分に当たり、上限は85,800円+(総医療費−286,000円)×1%です。医療費100万円の月なら92,940円で、改定前より5,510円増えました。2027年8月からは、この区分が標準報酬月額によって3つ(85,800円・98,100円・110,400円+1%)に分かれる予定なので、ご自身の標準報酬月額でご確認ください。

「年間上限」は自動で適用されますか。

8月から翌年7月までの自己負担の合計が年間上限を超えた分は、加入先の保険者から払い戻されます。手続きの方法は保険者によって異なるため、加入先の案内をご確認ください。

多数回該当の金額は変わりましたか。

変わっていません。直近12か月に3回以上上限額に達した場合の4回目以降の上限は、標準報酬月額28〜50万円の区分で44,400円のまま据え置きです。2027年8月には年収約200万円未満の区分だけ34,500円に引き下げられる予定です。

上限が上がったので医療保険を増やすべきですか。

一律には言えません。上限額に達する月の負担増はひと月数千円から数万円の規模で、それより差額ベッド代や先進医療など制度の対象外の費用、治療中の収入減、勤務先の付加給付の有無のほうが判断に影響します。まず貯蓄で上限額の数か月分をまかなえるかを確認したうえで、不足する部分だけを保険で補うのが基本の考え方です。

09 — TRY THE CALCULATOR

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本記事は2026年9月3日時点の公的資料に基づく一般的な制度の解説であり、2027年8月以降の内容は予定です。ご自身の所得区分や加入先の付加給付の有無によって金額は異なります。
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