保険の基礎知識
最終更新:2026年8月4日/監修:株式会社アールラボ
保険は「保障」「資産形成」「税務対策」という3つの目的を複合的に組み合わせて検討するものですが、その前提として、まず公的保障や勤務先の制度でどこまでカバーされているのかを知っておく必要があります。ここでは、保険の形・仕組みから、公的保障との関係、団体信用生命保険、三大疾病、年金制度まで、保険を検討する前に押さえておきたい基礎知識を中立的に整理しました。
特定の保険会社・商品をすすめる内容ではありません。ご自身の状況にあてはめた具体的な必要保障額や商品選びは、LINEのAI無料診断、またはFP資格者との無料相談でご確認ください。
保険加入の目的と考え方
個人が保険に加入する目的は、大きく「保障」「資産形成」「税務対策」の3つに分けられます。NISAやiDeCoなど他の金融商品・制度も充実してきた今、保険を検討するときは、これらの目的を漠然と一つにまとめるのではなく、「保険でなければできないこと」を目的に据えて考えることが大切です。
万一が起きた際の経済的な損失を未然に防ぐことができます。逆にいえば、大きな経済的損失が生じない事象に対する保険は基本的に不要です。
保険を利用した資産形成のメリットは「保障との組み合わせ」「年金形式での受け取り」「税制面での優遇」などです。これらのメリットを活かさない保険での資産形成は、他の手段に比べて非効率になりがちです。
個人保険では、死亡保険金の非課税枠(500万円×法定相続人の数)を活用した相続税対策が代表例です。高齢の方には、健康状態に関係なく加入しやすい一時払い保険が選ばれることもあります。
保険加入で大切なのは、「必要な保障を、必要な分だけ、必要な期間まで」加入することです。まずその世帯にとってどの保障がどれだけ必要かを考え、社会保障制度や勤務先の制度で補える分を差し引いた額が「保険で用意すべき保障額」になります。保障が大きいほど安心は得られるかもしれませんが、それが家計を圧迫する「保険貧乏」につながっては本末転倒です。反対に、保険で資産を「増やす」ことを狙うのは、保険の仕組み上、経済合理性に乏しい考え方である点にも注意が必要です。
保険の6つの「形」
保障期間・貯蓄性の有無によって、生命保険は主に次の6つの形に分けられます。
定期保険
保障が一定期間内のみ有効な、基本的には掛け捨てタイプの保険です。その分、保険料は割安です。満了時に更新が伴う商品もあり、更新のたびに保険料がそのときの年齢で再計算される点に注意が必要です。
収入保障保険(逓減定期保険)
保障が一定期間のみ有効な点は定期保険と似ていますが、保障額が年齢とともに減っていくのが特徴です。子どもの成長とともに必要保障額が減っていく一般的な世帯の状況に合いやすく、合理的な設計といえます(反対に保障額が増えていく逓増定期保険もあります)。
養老保険
保障と貯蓄を兼ね備えた保険です。保険期間中に死亡した場合は死亡保険金が、満期まで生存した場合は死亡保険金とおおむね同額の満期保険金が支払われます。満期保険金の額は積立利率によって変動し、近年は投資信託型の変額保険や、三大疾病などの払込免除特約を付けた商品も選ばれています。
終身保険
保険料の払込みが終わったあとも、保障が一生涯続く保険です。解約返戻金があるタイプもあり、運用型や積立利率によっては払込保険料以上のお金が戻る場合もあります。65歳などで払込みが完了する短期払いのほか、亡くなるまで払込みが続く終身払いもあるため、契約時にどちらか確認が必要です。
個人年金保険
死亡保障の付かない、貯蓄目的の保険です。払込保険料が一般・介護医療保険料控除とは別枠で所得控除の対象になる点がメリットです。円建ての個人年金は近年の利率の低さから需要が減っており、外貨建てや変額型の個人年金に三大疾病などの払込免除特約を付ける契約が増えています。
一時払い終身保険
加入時に一度だけ保険料を支払い、一定の待期期間を経たあとに大きな死亡保障を得られるのが特徴です。支払った一時払い保険料は積立金として扱われ、積立利率に応じて増えていきます。健康状態にかかわらず加入できる商品が多く、相続対策や資産運用の目的で選ばれることが多い保険です。
保障の種類一覧
民間保険の保障は、主に次の5つに整理できます。
要介護1〜5・要支援1〜2、または保険会社独自の認定介護状態(40歳未満を含む場合あり)に該当したときの保障。
病気やケガによる傷病系の就労不能、精神疾患、障害状態に対する保障。
がん保障・三大疾病保障・八大疾病・女性特定疾病、入院給付金・手術給付金・通院給付金・放射線治療など。
死亡保障+高度障害保障。積立を組み合わせた商品もあります。
死亡保障+高度障害保障に積立の要素を加えたもの。円建て・外貨建て・変額など、通貨や運用方法が異なる商品があります。
勤務先の保障制度
健康保険組合によっては、医療費の自己負担が一定額を超えた際に超過分を補助する「付加給付制度」が設けられている場合があります。国の高額療養費制度に上乗せされるため、実質的な自己負担をさらに軽減できます。また、被保険者が亡くなった場合は、健康保険から法定の埋葬料(一律5万円)が支給されるほか、会社や組合の規定に基づく弔慰金が別途支払われることもあります。いずれも加入する健康保険組合によって内容が異なるため、就業規則や組合規約の確認をおすすめします。
団体信用生命保険(団信)
団信は、住宅ローンを利用する際に付随する保険で、契約者が所定の状態になった場合に住宅ローン残高が0円になる仕組みです。保険料は原則、住宅ローンの金利に含まれており別途の負担はありませんが、プランによっては金利の上乗せが発生します。保障範囲が広がるほど段階が上がります。
よくある質問
団信の保障条件・免責期間・待期期間は住宅ローンを取り扱う金融機関・保険会社によって異なります。上記は一般的な内容の紹介であり、実際の契約内容は必ず各金融機関でご確認ください。
三大疾病について
医療保険を検討する際は、保障の対象範囲をどこまで広げるかが重要な論点になります。罹患率や治療費の観点で特に重要なのはがん・三大疾病ですが、生活習慣や家族歴によっては対象を広げる選択肢もあります。保険によって対象疾病の範囲が異なる点にも注意が必要です。
がん(悪性新生物)、心疾患(心筋梗塞など)、脳血管疾患(脳梗塞など)の計3疾病。
3大疾病に、高血圧性疾患・糖尿病・肝疾患・腎疾患を加えた計7疾病。
7大疾病に膵疾患を加えた計8疾病。
狭義のがんは悪性新生物のみを指しますが、広義のがんは悪性新生物に上皮内がんを加えたものを指します。同様に、狭義の三大疾病はがん+急性心筋梗塞+脳卒中、広義の三大疾病はがん+心疾患+脳血管疾患を指すなど、商品によって定義に幅があります。また、給付金を受け取れる回数(2回目以降の給付があるかどうか)も、保険を検討するうえで必ず確認したいポイントです。
年金制度について
公的年金は、国民年金(基礎年金)と厚生年金を中心とした、老後の生活を支える社会保険制度です。どちらも亡くなるまで受け取り続けられる終身年金であり、長生きするほど総受給額が増える一方、死亡時点で支給は終了し遺族への支給はない、という長生きリスクへの備えが最大の特徴です。
ただし公的年金だけでは老後の生活費を十分にまかなえないケースも増えています。総務省の家計調査によれば、老後の生活費は月平均25万円以上ともいわれ、公的年金との差額を自ら補う必要があります。そこで重要になるのが3階建ての考え方です。
国民年金(基礎年金)。20〜60歳の全国民が強制加入し、亡くなるまで受給できる終身年金です。
厚生年金(会社員・公務員など・報酬比例で強制加入)、国民年金基金(自営業・学生など・任意加入)。いずれも終身年金です。
企業年金・iDeCo(会社員・公務員など)、iDeCo(自営業・学生など)、個人年金保険(民間保険・全員が任意加入可)。終身年金タイプ・確定年金タイプ(期間固定)があります。
会社員であれば企業年金、自営業者であれば国民年金基金、そして誰でも加入できるiDeCoや個人年金保険を活用することで、受給額を上乗せできます。現役世代のうちから3階部分を意識して準備することが、老後の安心につながります。専業主婦(夫)などは1階部分のみが基本となるため、任意で加入できる個人年金保険やiDeCo(第3号被保険者も加入可)の活用余地が相対的に大きい点も押さえておきたいポイントです。
受給開始(65歳〜)から死亡まで受給し続けるタイプ。長生きするほど総受給額が増える一方、死亡時点で支給は終了し、遺族への支給はありません。
受給開始から一定期間(例:10年間)だけ受給するタイプ。死亡時は残額を遺族が受け取れますが、受給期間の終了後は支給がなくなる長寿リスクがあります。
iDeCoは受給開始時に一時金または年金(5〜20年)を選択できます。個人年金保険は商品により終身・確定のどちらも選べる場合があります。まずはご自身にとっての必要額を考えることが第一歩です。
本記事の内容は一般的な制度・商品類型の紹介であり、税制・給付額は今後の制度改正により変わる場合があります。また、記載しきれていない留意点もありますので、ご自身の状況にあてはめた具体的な必要保障額の算出や、商品選びについては個別にご確認ください。
まずはLINEのAI無料診断で、公的保障の試算から始められます。
生命保険と公的保障制度
民間保険を検討する前に、公的保障でどこまでカバーされるかを知ることが、保障が過不足なく「ちょうどよい」状態に近づく一番の近道です。保障の種類ごとに、対応する公的保障を整理します。
被保険者が死亡した際、配偶者や子などが遺族年金を受給できる場合があります。健康保険からは埋葬料として一律5万円が支給されます(被扶養者の死亡時も対象)。
健康保険適用の医療であれば自己負担は1〜3割。医療費が高額になった場合は、高額療養費制度により自己負担額に上限が設けられます。
病気やケガで働けず給与が出ない期間は、健康保険から傷病手当金が支給されます。生活や仕事に支障が続く場合は障害年金に移行できます。
40歳以上が加入する社会保険制度。要介護・要支援の認定を受けると、介護サービスを1〜3割の自己負担で利用できます(現物給付が原則)。
遺族年金のしくみ
遺族年金は、国民年金のみ加入の場合と厚生年金にも加入している場合とで、受け取れる内容が大きく異なります。金額は2026年度の確定額です。
受給権者の年収が850万円以下の場合のみ遺族年金を受け取れます。65歳以降は本人の老齢厚生年金が優先され、遺族厚生年金の方が高い場合はその差額が支給されます。
高額療養費制度
1か月間(1日〜末日)の医療費の自己負担額に、年齢や所得に応じた上限を設ける制度です。2026年8月1日の制度改定後、70歳未満の上限額(月額)は次のとおりです。〈 〉内は直近12か月に4回以上該当した場合の多数回該当の上限額です。
70歳以上の上限額は別途定められています。勤務先の健康保険組合によっては、上限額をさらに引き下げる独自の付加給付制度がある場合もあるため、あわせてご確認ください。
自由診療と先進医療
健康保険適用の治療は、診療報酬制度に基づく全国一律の料金体系・自己負担割合(1〜3割)です。一方、先進医療(がん・白内障・不妊治療の一部など)や自由診療(がん治療の一部・レーシック・正常分娩など)は健康保険の対象外で、治療そのものにかかる費用は原則全額自己負担になります。先進医療は「先進医療特約」、自由診療などの患者申出療養は「特定診療特約」といった民間保険の特約でカバーする仕組みがあります。
傷病手当金と障害年金
傷病手当金は、病気やケガで仕事を休み給与が支払われない期間に、健康保険から生活を支えるために支給される手当です。支給額は標準報酬日額の3分の2で、連続3日間の待期を経た4日目から、最長1年6か月受け取れます。国民健康保険(国民年金のみの加入者を含む自営業者など)には、傷病手当金の制度がありません。その後も症状が重く生活や仕事に支障が続く場合は、障害年金に移行できます。障害年金は国民年金・厚生年金から支給され、障害の程度に応じて1級・2級(厚生年金はさらに3級も対象)に分けられます。
公的介護保険
介護保険は40歳以上が加入する社会保険制度です。要介護・要支援の認定を受けると、訪問介護やデイサービス、施設入所などの介護サービスを1〜3割の自己負担で利用できます。給付は現金ではなく、サービスそのものが提供される現物給付が原則です。要介護度ごとに区分支給限度基準額(月額)が定められており、この範囲内でサービスを組み合わせて利用します。
在宅・地域密着型サービス対象(施設サービスは別途日額計算のため対象外)。1単位10円換算・地域により1単位10.0〜11.4円で異なります。限度額超過分は全額自己負担、特別養護老人ホームへの入所は原則要介護3以上です。